じゃあじゃあ びりびり
まついのりこ 偕成社
生まれたばかりの赤ちゃんは、視力・色を識別する力ともに弱く成長とともにだんだんと力がついてくるのだそうだ。そのため絵本も最初ははっきりした色彩のものが好まれるとか。生後2.3か月頃に赤・黄・緑、4~6か月頃に紫やオレンジが分かるようになるというのだから面白い。1冊の絵本でも毎日毎日読み続けているうちに、最初はぼやけた白黒だったページが日に日に色が変わり鮮やかに彩られていくのかと想像するとこちらまでワクワクしてしまう。なるほど!このはっきりとした色使いはそんな赤ちゃんにぴったりの絵本なのだ。
そしてこの絵本にはもう1つの魅力がある。それがオノマトペというやつだ。われわれ日本人は日常的に数多くのオノマトペを使い言葉の微細な違いを表現したりする。例えばこの絵本にも出てくる『じゃあじゃあ』。水が勢いよく流れる音を表現しているが、水が流れ落ちる表現だけ考えても無数にある。ぴちゃり。ぽつぽつ。ばしゃばしゃ。ざーざー。しとしと。この絵本は赤ちゃんが日常で遭遇するであろう”もの”たちのオノマトぺであふれている。もちろん最初は何のことか分からない。しかし日々の日常を積み重ねながら母の声を何度も繰り返し聞くうちに、ある時自分の体験と紐づき気づくのだ。そうじきの音!犬の鳴き声!紙をやぶる音!これだ!!そうなるともう夢中。何度も読んで読んで攻撃が始まり、そしてまたある日にはついに自分で『じゃぁーーーー』と言うようになるのだ。そんな姿に親もメロメロ。私は紙がやぶけるシーンで息子が発するたどたどしい『びぃい』がたいそう気に入り、それが聞きたいがために読んで読んで攻撃に何の苦痛も感じずひたすらにやにやと読みまくっていた記憶がある。
そしてもう少し大きくなってからは実際に音の体験(一緒に掃除機をかけて素材や場所による音の違いと手に伝わる振動を楽しんだり、水を張ったボールに強さを変えて水滴を落としてみたり、厚さの違う紙をやぶって音や触感の違いを比べたり)をしたものだ。そのとき感じたままの独特の表現をしてくれて、親子だけのオノマトペなんかもできておもしろいのでおすすめだ。
そんなこんなで新生児から3.4歳まで長く楽しむ要素の詰まったほんとうに最初に買うのにおすすめの1冊。